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小津安二郎の紀子三部作を見れば映画の凄さがわかる。

小津安二郎監督の代表的な3部作として知られているのが、「晩春」「麦秋」「東京物語」の3作品です。この3作品は、いずれも戦後日本の家族の姿を静かな視点で描いた小津監督の代表作です。日本人の心性をくすぐる家族の絆や人間関係がテーマとなっています。詳しくまとめてみました。

目次

紀子三部作

3作品は、いずれも原節子演じるヒロイン「紀子」を通して家族の情と日本の変化を描いた3つの作品です。その事から、紀子3部作とも呼ばれています。

共通のヒロイン紀子を通して、家族の絆、男女の心の交流、時代の移り変わりといった小津作品のテーマが一貫しているのが特徴です。詩的な映像と温かみのある人物描写が魅力的な三部作と言えます。

晩春

映画「晩春」は、小津安二郎監督が1949年に公開した作品です。主演の原節子の純朴な演技が好評を得、以後の小津作品でも起用されるようになりました。小津監督の静かな映像美と人物描写が光る、新時代の家族を温かく映した作品です。

麦秋

小津安二郎監督の「麦秋」は1951年に公開された作品で、戦後の学生と教師の交流を美しい映像で描いた名作です。

物語は、主人公の女学生・麦秋が、新しい学校に転入してきた保守的な古風な教師・学次と出会うところから始まります。互いに理解できない二人ですが、麦秋の純粋な心に打たれた学次は、次第に人生観を変えていきます。一方、麦秋もまた学次との交流を通じて成長していきます。

「麦秋」には小津作品の典型的な詩的な映像が光ります。麦秋が通学の際に歩く朝焼けの街並みや学校の情景、静かな家庭の日常は見事に描写されています。また、自然光を生かした照明も小津の作品の特徴です。

こちらの記事に詳しく感想を書きました。よかったらご覧ください。

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人物描写においても、原節子演じる麦秋の無垢な表情と姿、佐分利信演じる学次の内面の独白などが際立っています。二人の関係は繊細で、言葉以上のやり取りが感じられるシーンが印象的です。当時の学生と教師のギャップを通して、時代の移ろいと日本社会の変化を映し出すとともに、人間の絆の深さを優しく描いた作品といえます。公開当時は評価は高くなかったものの、今日では小津の代表作の一つとして高く評価されています。

東京物語

小津安二郎監督の代表作「東京物語」は、1953年に公開された家族の絆を温かく描いた感動作です。物語は、父母のもとを訪れた兄妹が、自分たちの生活に疎遠になった両親の姿に気づき、家族の大切さに目覚めていく様子を描いています。

主人公の兄妹は東京で忙しく働くサラリーマンと主婦で、地方の両親のもとを訪れるのは久しぶり。東京に嫁いだ娘が実家に帰省するシーンから物語が始まります。娘は父母の姿が思い描いていたのと違っていたことに気づきます。やがて娘の兄も訪れ、二人は高齢となった両親の姿に心を動かされていきます。

こちらの作品も以下の記事で感想を書きました。

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小津作品らしい静かな会話の中で、家族の愛情や時間の流れが静かに描かれます。夫婦のやり取りや、親子のさりげない会話から、家族の絆の大切さが自然と感じ取れるのが巧みです。自然光を生かした映像も見事で、東京と地方を行き来する静かな旅の描写が印象的。当時の日本の生活感が色濃く映し出されています。公開時の評価は今ほど高くなかったものの、今では日本映画の金字塔として高く評価されている作品です。

小津安二郎作品に欠かせない女優「原節子」

原節子は小津安二郎作品の常連女優として知られる名女優で、代表作に『晩春』、『麦秋』、『東京物語』などがあります。小津作品に欠かせない存在感を放っていました。

原節子は1926年生まれの女優で、1947年に新東宝に入社しました。初期の新東宝作品で端役をこなす中、1949年に公開された小津監督の『晩春』の主人公に抜擢されました。以後、小津作品の常連となり、約10作品に主演。無垢な少女から知的な女性まで、幅広い役柄を演じました。

特徴的なのは、小津映画らしい自然な演技力です。せりふを心に響かせるように繊細に演じ、内面的な演技が光ります。無駄のない自然体の演技は、小津作品の静かなテンポにマッチしていました。

1951年公開の『麦秋』では、新任教師と心を通わせていく女学生を演じました。無垢な表情と姿勢が印象的な演技で、以後の小津ヒロインの原型となりました。1953年の代表作『東京物語』でも、家族思いの娘を温かく演じています。

時代背景を反映した普遍的な娘像を演じる一方、『彼岸花』や『浮草』などの作品では、より現代的な感性の女性も演じるなど、幅広い役柄をこなしました。

その後も映画やテレビドラマで活躍し演技の幅を見せています。2006年に80歳で他界するまで、小津作品の象徴的なヒロインとして日本映画史に名を刻みました。

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